父の戦争

父が鹿児島からアンダマンへ向かった船の上では、「もう生きて帰れない」とメチルで乾杯(当時、アルコールはメチルしかなかった)。その結果、半数が戦地につく前に死亡。さらにアンダマンではマラリアで残りの半数が死亡した。戦闘でなくとも多くの兵士が死んだ。
 
父は衛生兵とか料理係だったから、実際に戦闘経験はなかったという。部隊そのものも本格的な戦闘には遭遇しなかったらしい。何故なら父は、原住民と一緒にドブロク作って酒盛りしてたというから。
 
原住民から父は結構、慕われていたという。上官は威張ってばかりだったから嫌われてた。父も何かと上官に怒られ、殴られていた、ってボソっと言ったことがある。敵より、上官の方が怖かったらしい。
 
随筆の同人をやっていた父だが、結局、戦争体験のことは最後まで一切、文章に残さなかった。「楽しい話になってしまう」と「思い出したくない」という矛盾した理由で、最後まで書かなかった。断片的に父から聞いた話は確かに楽しそうなことが多かった。でもそれだけではないのも感じていた。
 
ある日、父が居間でうたた寝をしていた。「寝るなら布団で寝れば?」と起こしたら、急に「すいません!」「すいません!」と大声を出し、自分の部屋に。何の夢を見ていたのか。どんな思いを想起したのか。父が、そんなものを引きずっていたのを、その時、初めて知った。
 
誰にも言わなかった、あるいは言いたくなかった「何か」を父は墓場まで持っていった。そして僕はその「何か」の上で生かされている。苦しんだのは英霊だけじゃない。

千葉法相が死刑を執行したことの「重み」

死刑反対議員連盟のメンバーだった千葉法相が死刑を執行した。
もっとも、千葉氏は法務大臣に就任したときに、死刑廃止議連からは脱退している。
「死刑の執行にサインする」ことが法相の責務の一つとなっているからだ。

この件で色んな見方が出ている。
死刑執行にサインしないことで、自民党が千葉氏に対して問責決議案を提出しようとしていたことに対する牽制だ、とか、夫婦別姓を通すために死刑執行にサインすることを官僚に耳打ちされたとか…。

死刑は大きな問題であり、それを夫婦別姓問題とのバーターとして実行する、なんていうのはあまりにバカげている。問責決議案が出たとしても、既に議員ではなく民間人となっており、9月に辞任する身である。それに、衆議院は未だ民主が安定議席数を保っているので、自民の問責決議案など、屁でもない。

千葉法相のコメント要旨を見ると、かなり覚悟した上でサインしているように思える。
http:// www.tok yo-np.c o.jp/s/ article /201007 2801000 327.htm l
「死刑の在り方を検討するため法務省内に勉強会を立ち上げる」

「死刑制度の存廃を含めて検討する。裁判員裁判で刑事司法への国民の関心が高まり、あるいは自ら判断する責任を国民も負っている状況の中で、成果を公表し、広く国民的な議論を行う契機にしたい」

「国民的な議論に資する観点から、東京拘置所の刑場についてマスメディアの取材の機会を設けるよう指示した」

これらの言葉からは、死刑制度そのものを見直すための道筋を最後に作りたかったように見える。

つまり、死刑制度の見直しを官僚に認めさせるために、二人の死刑囚の命を奪うという決断をしたというように思えてならない。

現行制度の中で、法相が死刑執行にサインしないのは極めて難しい。官僚からの突き上げもあるし、サインしないのが問責決議案の材料にすらなってしまう。

いま、死刑賛成派が8割を超えるという、一種の思考停止状況に日本はある。ここに一石を投じ、死刑制度見直しを進めるために、どうしても死刑執行にサインしなければならないのだとすると、なんという矛盾だろうか?

法務省官僚の死刑という権利に対する執着はかなり強いといわざるを得ない。そう簡単に、死刑制度の見直しなんてやる気は無いのだ。「我々は犯罪者の命を奪う権利を持つ」という頑なな確信。そのこと自体が、とても恐ろしいのだと感じられなければならない、と思った。
 そして、サインした二人の命を、死刑制度見直しの礎とすることになってしまったその決断の重さを感じているからこそ、本来、大臣の責務なのだから、立ち会う必要は無いにも係わらず、千葉法務大臣は死刑執行に立会ったのだと思う。法務大臣の死刑執行への立会いは、重い。
 
 この「重さ」を死刑制度反対派こそが、かみ締めていかなければならないと思う。

海兵隊のグアム移転、工事業者には…

暫く前のニュースだが、海兵隊移転工事を韓国系企業も2社受注
日本は1社のみでした。
 
$4-Billion Award Propels Navy Construction Effort on Guam
05/19/2010
By Debra K. Rubin
Even as the U.S. Navy awarded seven U.S. and Guam-based joint-venture teams on May 10 a $4-billion indefinite-delivery, indefinite-quantity contract for design-build work on the Pacific island and nearby sites over five years, it also started to compete the first major task order under the contract.
Construction will support relocation of thousands of U.S. Marines to Guam from their current base on the Japanese island of Okinawa. The contract is the largest ever by the Naval Facilities Engineering Command’s Honolulu division. Under the “multiple-award construction contract,” teams will recompete for task orders on new construction and upgrades of all facilities and infrastructure. The award is for a base of 12 months, but includes four one-year renewal options.
Selected firms include a Honolulu-based joint venture comprising Caddell Construction Co., Nan Inc., Manson Construction Co. and Samsung Texas Construction Inc.; and the Honolulu venture of Core-Tech, a Guam firm, with AMEC and Seoul-based SK Engineering & Construction Ltd. Also among the awardees is a joint venture of dck Worldwide LLC, Pittsburgh, and ECC, Burlingame, Calif., and the Honolulu team of Watts Constructors, Obayashi Corp., Healy Tibbits and Webcor Builders.
A Greeley, Colo., joint venture of Hensel Phelps Construction Co., Granite Construction and Traylor Pacific is also among the winners, as is the Kapolei, Hawaii, team of Kiewit Construction and Mortenson Construction Co. Tutor Perini Corp., Sylmar, Calif., is also an awardee. A NAVFAC spokesman says most of the teams have current or past work experience on Guam. NAVFAC also received an eighth proposal that was not selected for award. A spokesman declined to reveal its team members.
NAVFAC already is procuring the first major task order under the contract, an estimated $100-million award for construction of wharves, with proposals due on July 12, say project sources. The spokesman declines to confirm details.
Copyright c 2006-2008 The McGraw-Hill Companies - All Rights
 
以下意訳
 
米軍は米国本土およびグアムに拠点を置く7つのジョイント・ベンチャーに対して、総額40億ドルの太平洋の島および近辺の現場における設計・建設一貫契約を与えた。期間は5年間だが、サービス内容およびその量を明記していない計画であり、契約における最初の大きなタスクでの競争が始まっている。
建設工事は、米海兵隊が沖縄からグアムに移転するのをサポートするものであり、ホノルルベースの海軍設備エンジニアリングコマンドが発注する工事で過去最大級となる。複数発注形式による受注JVチームは、新規建設および既存設備・インフラの改良工事において、再び競争するこtになる。発注は12カ月の期間が基本となるが、1年毎に再契約のオプションがついており、最大4年間継続される。
選定された企業は、ホノルルJV1(Caddell Construction/Nan Inc./ Manson Construction Co./三星テキサス建設)、ホノルルJV Core-Tech(グアムCore-Tech~英AMEC/韓SK建設)dck JV(Worldwide LLC/Pittsburgh/ECC/Burlingame/Calif)、ホノルルチーム(Watts Constructors、大林組/Healy Tibbits/Webcor Builders)…(以下JVおよび企業名)。
 
発注者は米軍だし、単に日本のゼネコンの海外展開が遅れている、というだけの問題なのであるが…
日本はこの移転に対して多額の金額を支払うことになっている。いわばスポンサーである。
日本企業にも、少しは配慮していいんじゃないの?

音の波間に身を委ねて

昨夜、クラシックのコンサートに行った。
コンサートに行くなんてこと、本当に何年ぶりだろう。
ましてやクラシックのコンサートだ。
学生時代にはロックンロールばかりだった自分が、クラシックなんて、とちょっと自嘲してみたりした。

このコンサート、クラシックの割にはかなりの人気だ。かなり大きめの会場だが、席は殆ど埋まっている。最近はクラシック人気が高まったと言われているが、確かにそんな感じだ。

演奏が始まる。
自然と涙が出た。
クラシックの楽器はどれも綺麗な音がする。
その一つ一つの綺麗な音がオーケストラ全体で渾然と一体化し、複雑な色彩の揺らめく波となって、観客の体を包んでいく。

なんて心地よいんだろう。
音が、体に染み込んでいく。
そして時折、涙が出る。

「そうだ、音楽が足りなかったんだ」

昔、あれほど好きだった音楽。
その音楽から距離を置く日々。
忙殺のなかで、心が枯れていたのかもしれない。

心身をゆらりと包み込む、音の波間に身を委ねていられる、幸福な2時間半を過ごした。

こんなにリラックスしたのは本当に久しぶりだった。
いつもの夜更かしはできなかったよ。

 

あやしいぞ、阿久根市長

 阿久根市長家族の経営会社、市発注工事を1円差で落札
http://www.asahi.com/national/update/0320/SEB201003190056.html
 
坂口弁護士がブログでその金額を入れることの難しさを示している。
 
阿久根市長の家族会社の落札は天文学的難しさ(地方自治96)
http://blogs.yahoo.co.jp/abc5def6/61345116.html
 
最低価格の1円上なんて入札価格は、まず今まで公共事業では聞いたことがない。そんな金額を予想すること自体、ほぼ不可能だ。
しかも金額が446万477円と1円単位にまで及んでいる。普通、金額はもっと丸めるもんだろ?
 
次点となった別の業者は、446万480円を出している。これ自体も驚異的な入札金額だが、市長の家族の会社はこれを3円下回っているという僅差。
 
こうなるともう、他社の入札価格と最低価格の両方を市長関連会社は知っていたとしか思えない。
 
金額を丸められなかったのは、他社の価格の10円下では、最低価格以下になってしまい、失格となるからだ、と考えることになんら不思議はない。むしろ積算でこの金額が出た、ということの方がよっぽど不自然だ。
 
市のホームページhttp://www.city.akune.kagoshima.jp/sisei/h21/220226.pdf
で確認したところ、この総合運動公園施設整備工事には9社が応札している。そのなかで市長の家族会社である三笠興産のみが1円単位までの細かい数字を出している。
 
それだけではない。この入札では予定価格の81%前後に上位3社の金額が集中しているではないか。最低価格以下となった会社の金額が出ていないが、これも同程度とすれば、落札ライン価格の情報が漏れている可能性も非常に高い。
 
こんなあやしい入札結果をこれまで見たことがない。
検察はこれを見て何も感じないのだろうか?
あまりに不自然だ。

いつまでも居るって、安心してた

元祖「合がけ」87年 築地の「大森」20日閉店 http://www.asahi.com/national/update/0319/TKY201003190136.html

いつも前を通る度に、「今後また、ここの合いがけを食べよう」って思ってた。
でも僕はいつも、寿司やら、ラーメンやら、海鮮丼やら、親子丼ばかりに浮気ばかりしていた。

それでも君はずっと、そんな僕を責めようともせず、
いつもあの街角に居てくれる。
そう思って安心してた。
いつかは君のところにもう一度帰る。
そんな日が来るって信じてた。

でも、それはもう叶わない夢。
君はもう居なくなる。

サヨウナラ…元祖…

BGM「デイドリームビリーバー」byタイマーズ

盲導犬の胆力

先週金曜日、横浜での取材の帰りの東海道線の車中、盲導犬に出合った。視覚障害の女性の補助犬だ。

少し離れたところから何気に彼(?だと思う)を見てみると、なんと左の前足が、隣に立ってたサラリーマンの靴の甲の上に乗っている。つまり、この人、こともあろうに犬に足を踏んづけられていたわけだ。
通常なら適当にあしらって、犬に足をどかせるところだろうが、このサラリーマン氏、ちょっと困った顔をして、彼を見下ろしていたものの、じっとそのまま耐えている。
 彼のほうは、ご主人の女性のサポートに神経を集中しているのか、人の足を踏んづけているのに気が付かない様子。どけようともしない。一瞬、僕の方に視線をよこしたが「何か?」と落ち着いたご様子。

やがて駅についたところで、盲導犬くん女性ご主人が降車、続いてサラリーマン氏も降車、ようやく犬の足から開放された。

何一つ身じろぎもせず、黙って犬に足を踏ませていたサラリーマン氏の心優しさと、盲導犬の堂々たる落ち着いた態度に、深く感動した。


…実は大分以前だが、千葉での取材の帰り、内房線に乗り、座ってうたた寝こいていた私は、とある駅に停車中、湿った、生暖かいものが膝をつつくのを感じた。目を開けると、眼前に犬の顔が。「え!?」一瞬、驚いたが、すぐに盲導犬と理解した。その次の瞬間、「席、ゆずれよ」とばかりにもう一度、私のヒザをつつき、「あっちいけ」とばかりに顔を横に振られた。

かなり頭が混乱し、とっさに何かを判断することもできず、素直に犬の支持に従って席を譲った。ご主人は「おい、本当に席空いているのか?」と犬に聞いていたが、犬が答えるはずもない。どうやらこの犬、今までにもご主人のために人をどかしたことがあるらしい。

犬から種の壁を越えた命令を受けたのも初体験で衝撃だったが、混乱していたとはいえ、生命樹の下位の存在からの指示に素直に従ってしまったことで、自尊心がやや崩れそうになり、恨めしそうな顔で、かの盲導犬くんを見つめていた私を、彼は「何か?」という目で見返してきた。もう、僕には何にもできることはなかった。

そんなご主人思いの、肝の据わった盲導犬が今、全国で1000頭近くいます。しかし、希望者はその約8倍にも達しているということです。