橋下弁護士の罪と死刑・裁判員制度(ぎんがみ風「やばいぞ日本」)

 橋下弁護士が光市母子殺人事件の弁護団に対し、テレビで懲罰請求を呼びかけたことで訴えられている。

 訴えられて当然だ。懲罰請求とはこの件で初めて知ったが、調べてみればみるほど、当事者でもない、単なるテレビの視聴者が安易に請求するような「お気楽」なものではないことがはっきりする。

 端的に言えば、懲罰請求を行う者には「法的責任」が課せられている。自ら懲罰請求にあたる弁護士の行為を立証。調査する義務があり、それを怠れば逆に提訴されることになる。今年4月の最高裁判所の判断であり、いたづらに懲罰請求を行うことを戒めているものだ。当然である。単に弁護士が気に入らないから、あるいはある特定の思想に基づく妨害行為として懲罰請求が行われるようであれば、弁護士の活動ができなくなり、司法の公平性が保てなくなるのだ。

 この判断からすれば、何も知らない視聴者に「テレビで懲罰請求を呼びかけること」これ自体が最高裁判所の判断から逸脱した行為であり、しかも視聴者を無意味に「法的リスク」のもとにさらしてしまったのである。
 果たして、橋下弁護士は「リスクがある」ことをこのテレビでちゃんと説明したのだろうか?説明していないのであれば、見苦しい言い訳は置いといて、まずは視聴者に対して「お詫び」しなければならない。

 しかも自らは懲罰請求をかけていないという。人にリスクを負わせておいて、自らは安全圏に居て愚にもつかない批判を展開し続けるとは、なんともはや…。

 さて、そもそも橋下弁護士は光市事件の弁護団の行為の何が懲罰請求に値するものなのかという、基本的な、そして合理的な説明を「全く」していない。「法律家として発言した」といいながら、法に照らして弁護団のどこか問題なのか、説明していない。単に「ケシカラン」という感情の問題だけである。
 法律家として正当な発言はどこにもない。はっきり言ってド素人レベルだ。

 例えば「弁論を欠席したのがケシカラン」と言っている。これはテレビでそう言っていたことをそのままコピーしただけ。法律の専門家でもないテレビの編集者の悪意ある偏向報道に乗っかっているだけだ。法律家として論証を加えた形跡がない。

 このとき弁護団が欠席したのは、弁護人が替わったため、準備のための時間が足りなかったからと弁護団は釈明している。しかも弁護団は事前に裁判所に延期申請をしていたが、「なぜか中身も見ずに却下された」。通常であれば当然受理されるものが、受理されなかったと説明している。
 裁判所が何故延期申請を却下したのか。橋下が弁護士というならば、むしろこの点を問題にするべきだ。にも係らず、これはスルーして、欠席した弁護団のみを攻撃している。法律家を名乗っているわりには随分偏っている。

 もう一つ、「何故、差し戻し審で主張を変えたのか?」という橋下クンの主張だが、これも上のものと同じ。法律家でもないテレビの編集者が作った報道番組の主張そのままコピーしたものである。ここにも法的な論証を加えた形跡が全く見られない。

 そもそも差し戻し審で主張を変えること自体、法律で認められた正当な行為だ。それを批判する事は自ら「私は法律家ではありません」と証明しているようなものだ。

 さすがにまずいと思ったのか、その後は「きちんと話す義務がある」という主張に変わっている。

 はて?公判中に弁護士にそんな説明義務規定があるんですか?無いですよね?

 もう明らかに「法律家として発言した」なんてウソですよね?法的な説明一切、何もしていないじゃないですか。

 言いたいのはこういうことでしょ?
「世間的に注目されている重大事件なんだから説明して欲しい」ってことでしょ?「法律家として発言した」「説明の義務がある」なんて偉そうなことを脅しをかけるようにいうのではなく、本来は「説明お願いします」って言うべきところですよね?

 しかも、既に弁護団はその内容を詳細に説明している。それがまたテレビの、知識の無い編集者たちの悪意ある偏向報道によって捻じ曲げられ、「デタラメ」のように扱われている。

 橋下弁護士が批判をしているのは、この「テレビによって捻じ曲げられた主張」の中身なのである。ここでもこの弁護士はきちんと論証を加えた形跡がない。

 正しい弁護士の主張は「光事件Q&A~弁護団への疑問に答える~光事件弁護団」という名前でインターネットでも確認できるが、橋下弁護士はこの簡単な作業すら怠っているのだ。
 これを見れば、そもそも1審2審の方が問題だったことがわかる。被告は自分の訴状すら見ていない。弁護士には「争うな」といわれ、自らの主張を塞がれていたということが分かる。現弁護団に変わって、初めて被告は自分の主張が聞いてもらえるようになった。

 さらに、検察の主張に捏造が混じっていることも分かってきている。殺害方法に関する法医学を無視した主張を行っているだけでなく、殺害も強姦もその意図は無かったと本人が言っているのに、当初からその意図があるかのように作り変えられている。
 最も悪質な改竄は乳児に関するもの。
 法医鑑定上、乳児には「床に叩きつけられた形跡がない」にも係らず、検察はそれを無視して「叩きつけた」としている。とにかく警察・検察はどうしてもこの犯人を「極悪非道」なイメージに仕立て上げたかったらしい。

 そして、それに安易に乗ったのがマスコミ。

 さらにその安易なマスコミに軽薄にも乗っかって視聴者を扇動したのが橋下弁護士である。その罪は重い。

 警察とマスコミがタッグを組んで印象操作すれば、人一人抹殺するのは実に簡単であることが、今回の件で判明した。
 また日本人はまだ、マスコミの印象操作に安易に乗ってしまうという、実にリテラシー能力のない国民性であることもはっきりした。

 こんな状況で裁判員制度を導入したら、裁判員はバッシングが怖くて正当な判断ができなくなり、殺人事件の犯人はすべからく皆死刑になってしまうだろう。

 このような国民に裁判員制度は不向きであり、死刑を存続させるのは「ナントカに刃物」ということだ。

 今までは早急に死刑を廃止する必要はないと考えてきたが、日本人がまだ、この程度のレベルでは、むしろ早急に死刑制度を廃止するべきだと思い直した。また裁判員制度の導入は直ちに中止するべきだ。