内閣府の死刑世論調査が示す「恥」

内閣府の死刑に関する世論調査の結果概要
http://www8.cao.go.jp/survey/h21/h21-houseido/2-2.html

この調査で考えたこと

①「場合によっては死刑もやむを得ない」が85.6%で過去最高。死刑廃止はわずか5.7%で過去最低。「わからない・一概に言えない」も8.6%で減少し、死刑容認論が極めて高くなっている。
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 「どんな場合でも」「場合によっては」と質問についている枕詞でバイアスがかかっているうえに、実質二択でしかないことから、この調査では死刑容認に答えが集中するのは当然としても、時系列で見た場合の死刑容認の増え方はちょっと異常である。
 これは、日本がこれまで、人権意識に関する啓蒙を一切やってこなかったということであり、人権教育の徹底を急がなければならないということが指摘される。

②一方、死刑存続に関しては「将来も死刑を廃止しない」が約61%「状況が変われば、将来的には死刑を廃止してもよい」が約34%。前回に対して「廃止しても良い」は2.4%上昇している。「廃止しない」はほぼ同じ。
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 世界の3分の2が死刑廃止国であり、日本が国連人権委員会から勧告を受けているということが、将来の廃止への容認にわずかながら繋がっているようにも見える。が、単なる誤差の範囲とも言える。やはり圧倒的に死刑を支持する人が多いので、日本の人権教育が貧弱であることが示されている。

③最も興味深いのが「死刑の犯罪抑止力」に関する回答だった。
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死刑廃止で「凶悪犯罪が増える」と回答したのは62.3%、増えないが9.6%。
だが、前回調査と比べると、「増える」が2%上昇している一方で、「増えない」の比率も3.6%も上昇している。わずかながら、死刑による犯罪抑止が実証されていないという認識が広がっていることを示しているようにも見える。

 さらに、死刑存廃別に見ると「死刑廃止」の人でも、27.9%が「犯罪が増える」と回答。「増えない」の30.6%とほぼ同数となっている。
 「死刑存続」の人では、「増える」との回答はわずか6.7%、「増えない」が8.1%となっている。
 死刑存続の人でも死刑による犯罪抑制力を否定しているのがわずかに多いのも面白いが、ほとんどの人が回答を拒否しているというのが重要だろう

 死刑支持の最大の理由については「被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」を挙げた者の割合が54.1%,「凶悪な犯罪は命をもって償うべきだ」を挙げた者の割合が53.2%となっている。「死刑を廃止すれば,凶悪な犯罪が増える」も51.5%と高い。
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実はここで死刑存置の理由の中に「犯罪増加」が入っているので、改めて質問に回答者が戸惑っているのかもしれない。

この世論調査は調査として低質であることは事実だが、時系列で見た場合の意義はそれなりにある。その点から見れば、人権教育を怠ってきた日本政府により、日本人の人権意識が世界的にもきわめて低く、さらに低下を続けているということが、明らかになっている。

この調査結果は、その調査方法とともに、全世界に日本の恥を晒している。