公教育の破壊を模索する都教委

都立高校長、教委に反旗「職員会議で挙手禁止おかしい」
http://www.asahi.com/national/update/0521/TKY200805210162.html?ref=toolbar2



 既に2006年から、こんな異常なことが行われてきていたということを知らなかった。
東京都教育委員会はどうやら、公教育を破壊するつもりらしい。

 学校運営を校長の意思に従ってやればよいという考え方は、旧日本帝国軍のガバナンスと同じ考え方である。

 旧日本帝国軍はそのため、極めてひ弱な組織であった。
 作戦を立てているのが現場を知らない人々で、現場の問題を把握できずに無謀な命令を繰り返したため、貴重な兵力を次々と失っていった。

 その結果大戦初期では欧米に比べても練度が高かった日本軍はすぐに訓練された兵士を失い、国民から無理やり連れてきたド素人を前線に送ることになる。

 また軍のトップが技術オンチだったこともあって、技術開発がトンチンカンになり、有望な技術の導入の決断もできなかった(結局、日本人が開発した有力な技術-指向性アンテナ-は欧米に先に使われてしまった)。結果、戦時中から日本軍は打つ手を殆ど失っていったのである。

 何故か。

 組織というのはそもそも、トップダウンだけでは行き続けることが出来ないのである。トップの少数の人間の考えることには限界がある。従ってトップダウンを続けていると次第に組織は硬直化し、柔軟性を失い、最後には破滅していく。

 日本の敗戦は、旧帝国軍の無能なトップによる意思決定のみを尊重し、非効率的な巨大組織を、非合理的に動かしていたことによる、当然の帰結といえる。

 一方、戦後驚異的な発展を遂げた日本の製造業の成長要因の一つには「ボトムアップ志向」がある。
 トヨタに象徴される「カイゼン」は現場での日々の活動なのである。ホンダでは現場技術者が創業者を否定して初めて、成長軌道にのった。

 考えてみれば当然だが、ボトムアップがなければ、トップダウンは効力を発揮しないのである。


 従って「教育の質を高める」という視点からすれば、東京都教育委員会のやっていることは「真逆」なのだ。つまり、彼らは教育の質を高めるための組織ではないということになる。

 教育は教員が行うものだ。教育委員会はそれをサポートしなければならない。しかし都教育委員会は教員を締め付けているだけ。その意見を封じこめているだけだ。

 こんな無能な組織はめったに存在しない。

 こんな状況が続けば、優秀な教師は早晩、都立高校から離れていく。その後に残るのは、上役の顔色を伺うだけで生徒を見ようとしないロボット教師のみとなる。そこに生徒を通わせたいと思う親はいなくなる。
 東京都教育委員会は明らかに公教育を破壊しようとしている。