教育現場は政治プロパガンダの場ではない

 「文部科学省は17日、中学校社会科の新学習指導要領の解説書に、韓国と領有権を巡って争いのある竹島を「我が国固有の領土」として新たに明記する方針を固めた。

 これまで北方領土に関する記述はあったという。であれば、竹島に言及しないのもちょっとおかしい。日本が抱えている領土問題全体を敷衍する形で教えるのはそれなりに意味がある。尖閣諸島に関する記述もくわえるべきだ。

 その上で、日本がこれまでどのような領土問題を抱えており、どう対応してきたか、どういう問題が残っているのかを教えるべきだろう。

 ただ、記述の仕方が問題だ。
 「我が国固有の領土」と記すのであれば、韓国側も全く同じ主張をしていることも併記する必要がある。それでなければ領土問題に関する教育ではなくなり、単なる「政治的プロパガンダ」に過ぎなくなってしまう。

 教育の場をプロパガンダに使うことは戒められなければならない。
 我々は北朝鮮に住んでいるわけではないのだ。

 日本がいくら「我が国固有の領土」と叫んでも、それで日本の領有権が確立するわけではない。戦後何十年も同じことを繰り返し、そして未だに何の解決の糸口も見えていないのだ。

 かつては日韓の交渉のなかで「共同統治」という話も出たことがある。日本の首脳はこんなちっぽけな島が日韓交流の妨げになっているのならば「爆破してしまいたい」と言ったこともある。

 それでもなおかつ、竹島を巡って日韓は平行線をたどったままだ。お互いに全く同じ主張を繰り返しているだけだからだ。

 北方領土に関しても、日本は全く交渉を進展できていない。ロシアの行為が逸脱したものであるとしても、米国がそれを認めており、既に戦後60年間もロシアの実効支配が続いている以上、既定事実としては明確にロシアの領土なのだ。

 それに対して日本の姿勢は「返せ」の一点張り。こんな幼稚な主張をいくら続けていても、今後何百年経とうが、北方領土が日本に返ってくることはないだろう。

 要するに日本政府は戦後60年間、ただ「我々のものだ」と言っているだけで、何も交渉らしい交渉はしてきていない。これで返ってくるなんて考えているなら、自民党はバカだ。

 本音として、与党自民党は領土問題のような難しい問題を扱いたくないのである。実力がないから、成果の出る見込みのない仕事を誰もやりたがらないのだ。ただ「我々のものだ」と主張していれば、右翼勢力の票を得られるから、そういっているだけなのだ。

 今回の件もその一貫に過ぎない。
 本気で自分達で領土交渉などやる気が無いクセに、票欲しさに教育の場で政治的プロパガンダをやろうとしているに過ぎない。