「談合排除」は公共事業の自殺行為

 昨年1月に改正独占禁止法が施行され、談合の排除が強化された。既にその時点で、昨今の公共事業の荒廃が起こることは十分に予想できていた。
 にもかかわらず、与党自民党も行政各機関も全くそれに対応することはしなかった。現在に至っても、有効な施策は行われていない。このままでは公共事業そのものがダメになり、国民生活にも大きな影響を及ぼすことになるかもしれない。

 新潟県では土木部が発注する工事のなかで「低価格入札調査制度」の対象となった案件が2006年度には83件となり、前年度の4倍以上に達していた。
 談合に対する取り締まりが厳しくなったため、受注するためにはとにかく価格を下げるしかない。業者のその心理が低価格入札を頻発している。落札率でいえば、以前ならば90%以上だったものが急落し、60%以下となっているものもあるだろう。
 関係者ならわかるだろうが、資機材は今高騰している。それなのに、そんな低価格で受注すれば、必ず「手抜き」が行われることになり、工事品質は急落する。これだけ見ても、公共工事全体で品質が危うくなっているのがわかる。

 低価格入札は改正独占禁止法導入から、直ぐに始まっており、今年度に入ってもそれは続いている。自民党は慌てて、低価格入札対策委員会を設置したが、そこで出てきたのが「ボンドの導入」。それで何故低価格入札が抑えられるのか、誰も理解できない。おそらく品質保証金の意味でしか捉えていないのだろうが、ボンドにその機能はない。やはり自民党ではこの問題への対応は無理のようだ。

 公共工事では「品確法」という法律もあるが、これも品質を保証するというよりも、何かあった時に、自治体が業者に責任を押し付けるための法律に過ぎない。

 本当の問題解決は別のところにあるのに、それに自治体や自民党政治家は気づくことができない。
全く、勉強不足もいい加減にしてもらいたい。

 こんな状況が続くようでは「公共工事なんかやめておけ」と言いたくなる。実際、東京都では業者が応札を辞退するなどで入札が成立しない「入札不調」が2006年度で前年度の3倍にも増加しているという。既に業者の「公共工事離れ」は始まっている。

 業界では「公共工事はリスクが高い」という認識が広がっており「もう公共はやらない」という会社もある。民間向けの工事や海外の案件が活発である現在、大手の優良業者はもはや国内公共工事には見向きもしなくなってきた。

 今後、公共工事に応札するのは、公共工事でしか生きていけない業者だけだ。しかし、それも低価格入札が頻発すれば、事業を続けていくことができなくなる。

 公共工事の発注制度を抜本的に見直さない限り、公共工事はいずれ立ち行かなくなるだろう。