東シナ海資源開発から日本は脱却せよ

 これ以上、日本は中国の戦略に乗せられるのはやめるべきだ。東シナ海の資源問題は、完全に中国側のペースで進められている。日本の政治家がミスリードしているためなのだ。

 そもそも中国は東シナ海の資源など、大して重視しているわけではない。もっと有力な資源が中国国内にあるし、最近になってからも次々に有望は資源が発見されている。それに加え、ロシアからもエネルギー資源の供給を受けられるし、最近ではサウジアラビアなど中東地域との関係も強固なものにしている。資源確保の面では、日本より中国の方がより積極的であり、しっかりしている。
 従って、中国は東シナ海資源が「出なくても」困らないのである。ただ、経済性を確保しつつ生産が可能ならば、確保しておきたいというだけであり、プライオリティは低い。いつまでたっても春暁ガス田での本格生産が開始されないのは、「本格的」といえるほどガスが得られていないためと考えるのが常識的な考えだ。
 中国はこの見込みの低いガス田に、これ以上投資する気はなかった。だが、そこに日本の政治家が噛み付いてきたことで流れは変わったのだ。

 中川前経済産業大臣は、中国嫌いで有名だ。その中川氏がAPECの場で、東シナ海ガス田問題で中国に文句をたれた。これに、エネルギーのことなど何も知らないウヨ達は拍手喝采したが、資源エネルギー庁は冷め切っていた。資源量ある程度あるかも知れないが、開発に金がかかりすぎ、経済的に見合わないことを知っていたからだ。だから「これは政治問題」と片付けている。共同開発にでもなれば、エネ庁の予算が増えるから歓迎、ぐらいにしか思っていない。

 だが国民にしてみれば大事な税金を、見込みのない資源に対して「無駄遣い」される形となるのだ。

 一方、中国にとって中川氏以降の日本からの「いちゃもん」はまさに「渡りに船」であった。中には「データを全て出せ」というようなヤクザ紛いの脅しまであったが、それは無視すればよい。中国にとって大事なのは「開発コストをあまりかけずに、ガスを中国に持って来る」ことなのだ。従って、日本がイチャモンをつけてきたことを逆手にとって「じゃ、共同開発でいかがッスか?」と提案した。
 実は、数十年前に日本から中国に共同開発を持ちかけたことがあった。当時のエネ庁幹部が中国を訪問した時に話題に出したが、当時の中国は即答でこれを拒否したため、正式な外交記録には乗っていないが、当時のエネ庁幹部は明瞭に記憶している。
 そういう過去もあるので、案外乗ってくるのではないか、と中国は考えていたのだが、案の定、というかホイホイと日本はこれに乗ってきた。これによって、中国は日本の資金を使ってガスを調達できる可能性が出てきたのである。東シナ海では生産したガスを日本に持ってきてもコストがあわないので、中国に持っていくしかないからだ。

 先週の会議では、今秋までに共同開発計画案をまとめることを確認したという。だが中国側は新提案を示さなかったという。中国のこの冷めた態度は、いよいよ中国にとって東シナ海がどうでもよくなってきたことを示している。
 昨年6月、香港の南の海底でカナダのHuskey Energyなどが大規模ガス田を発見した。「麗湾(リーワン)ガス田」である。可採埋蔵量は4~6TCFという、LNGにしても十分に採算が取れる規模だ。しかも大消費地香港までわずか250km。深度は深いとはいえ、パイプラインで供給できる。中国初の大深度海底ガス田開発となるが、Huskeyが参加するので特に問題はなさそうだ。Huskeyは2013年の生産開始を目指している。

 この麗湾ガス田に比べれば、東シナ海ガス田など霞んでしまう。もしかしたら中国はもう関心を失っているかもしれない。時間ばかりかかる、うるさい日本との交渉にもうんざりしているのではないか。もはや、日本にとって東シナ海にこだわり続けることは、中国を利するだけとなってしまう。

早期に日本は東シナ海資源問題から脱却を図り、日本にとってより有望な資源の確保にリソースを振り向けるべきだ。