やっぱり電力自由化は必要だ

 福島原発事故は、世界最大の電力会社である東京電力でさえ、原発事故を単独で補償することが出来ない、という事実を示した。また、いわゆる「計画停電」では電力会社の最大の責務である供給責任を果たせなくなったことを示した。震災の影響とは言え、かつての電力自由化議論に抵抗した際の決め文句「安定供給責任」を自ら放棄してしまったのだ。

 このため、産業界は大きな影響を受けた。これに懲りた産業界は今、自家発電能力の増強に躍起であり、自家発電設備メーカーへの問い合わせが非常に多いという。問い合わせの中味は、非常用発電設備の常用化に関するものから、新設の相談まである。非常用の常用化であれば、多少の改造が必要なだけで、この夏には十分間に合うが、新設となると、今からでは夏には間に合いそうにはない。メーカーの生産体制は近年、縮小傾向だったからだ。

 それも、自由化への電力会社の抵抗が背景にある。
 
 大口需要家への自由化が決まった後、新規電気事業者の参入拡大を阻むべく、電力各社は大口需要家への電気料金を引き下げた。その結果、自家発電のコストが高くなり、企業は必要最低限の非常用発電のみを設置するようになったのである。国内の自家発電設備市場は、電力会社の電気料金値下げによって、急激に縮小してしまい、メーカー側も生産体制を縮小せざるを得なかった。さらに、石油と連動するガス価格の上昇が追い討ちをかけ、CO2削減に繋がる技術として期待されていたガスエンジンの販売も殆ど停止してしまっていた。本来、企業が自身の企業活動を守るべき自家発電能力が十分に設備形成されてこなかった。
 
 しかも、自由化市場では電気料金は低減されたが、一般家庭は自由化されなかったため、寧ろ電気料金は引き上げられた。

 今後、ソーラーセルは国際間での価格競争の時代に入っていくものと思われる。電力供給を電力会社に全面的に依存しなければならない時代は終わりつつある。再生可能エネルギーへのシフトを促し、電力供給のバックアップを保有しておくためにも、やはり電力事業の自由化は必要だ