誰が検察を監視できるのか?

 週刊朝日の検察批判記事に対して、ついに検察が権力行使を始めた。ジャーナリストの上杉隆氏と、週刊朝日編集長の山口一臣氏に今日(2月3日)出頭要請があったという。ツィッター上杉隆氏本人が、出頭要請があったことを述べている。また有田芳生氏は「「本日出頭を」と要請の東京地検。出張中の山口一臣週刊朝日」編集長が「今日は無理」と答えると検事は絶句。自分の都合で世界が回ると思っている唯我独尊の非常識」とツイートしている。
 これに対して「事実ではない」とする話も出ており、事実関係は混乱している。朝日新聞が、検察からの要望にしたがって、「出頭要請」ではなく「記事への抗議」としているが、一方でそれは表検察と大マスコミの癒着であるという情報も流れるなど、ツイッターは大騒ぎになっている。
 まあ、2月4日にも事実は明らかになるだろう。

 ところで問題となった週刊朝日の記事は、いかに検察が非道な取調べを行うか、を如実に示していた。「子ども"人質"に女性秘書『恫喝』10時間」を怒りなくして読むことはできないだろう。

 実際にこんな取調べは行われるのか?

 既に逮捕、拘留中で起訴がほぼ確定している石川議員の弁護人となっている安田弁護士が法務および検察う、裁判所に提出した要望書によると、「本件における任意の事情聴取においてさえ、検察官は被疑者に対して、「容疑を認めないと帰さない」等の脅迫的な取調による自白強要を行っている」という。

石川議員の弁護人になった安田好弘弁護士らが法務・検察や裁判所にあてて出したもの
http://uonome.jp/article/yasuda/814

任意の聴取でさえ、「容疑を認めないと帰さない」というのは殆ど違法捜査である。拘置には裁判所の許可が必要だ。任意では不可能である。それをしゃあしゃあと脅しとして使うのだ。女性が「必ず帰ってくるから、子供の迎えだけは行かせてくれ」と頼んでいるにもかかわらず「人生、そんなに甘くないでしょ」と一顧だにしない。そのまま10時間もの拘束を受ける。これは石川議員に対しても、脅しとなる。

こんな取調べをしておいて「供述が変わってきた」「容疑を認める発言をしてきた」とリーク情報を流されても、信じることなど殆ど出来ない。こういう捜査方法を続けていけばいくほど、検察への不信は高まっていく。

 検察の横暴は、今に始まったことではないが、特に鈴木宗夫氏、佐藤優氏、ホリエモン村上ファンドあたりから特に酷くなってきた。小さい事をさも大事件であるかのように扱っていく。外部から遮断された状況で、何日も監禁され、たった一人で検察の求める答えを言わなくてはそこから開放されない。その異常な状況のなかで、得た証言など真実としての価値はない。裁判における証拠とはなりえない、というのが普通の感覚だろう。

 このような形で取り調べを行うなかで、結局は冤罪を生み出していく。今の検察は、社会正義を守る組織ではなく、「冤罪製造装置」である。

 問題は、検察の内部にもあるが、外部にも存在する。検察を管理監督できる組織が、日本には事実上、存在しないのだ。

 裁判所と検察は人事交流を繰り替えし、いまや殆どの裁判官は検察よりの立場である。刑事事件で弁護側がいくら重要な疑義を提出しても、裁判官は検察側の主張しか聞かないで判決を下す。

 裁判所には「検察審査会」という組織があるが、ここが行っているのは「不起訴」の審査のみである。権限としては「不起訴不当」しかない。しかも検察と裁判所はつながっているので、これが動くときは、なんらかの連絡がついた上での話となる。実質的に検察を管理監督するようなしろものではない。

 実はもっと強い権限を持っている検察の監視組織があるという。「検察官適格審査会」だ。

 保坂展人氏のブログ「保坂展人のどこどこ日記」でその組織が紹介されている。

凍りついた「検察官適格性審査会」秘話
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/4e17bd1577633247abbcdad0bf34b1f2

以下引用
日弁連会長や法曹界有識者、4人の衆議院議員、2人の参議院議員ら11人で構成される。前出の「検察審査会」とよく似た名称で間違える人も多いが、「検察官の適格性」を審査する場である。国会に設置されている裁判官訴追委員会弾劾裁判所の「検察官版」ということになるが、橋本内閣の省庁再編のどさくさに紛れて事務局設置の場が総務庁から法務省に移動した。
さて、年間予算がいくらかと聞いて驚く。なんと16万円程度というのだから話にならない。戦後、この「検察官適格審査会」が不適格認定して免職にしたのは、失踪してしまった副検事に対してただの1度きりだ。
引用ここまで

検察官を罷免できる強い権限を持ちながら、総務省から法務省に所管が移され、年間予算がわずか16万円。実質的に稼動してはいないということだ。つまり、どこから見ても検察はどんな非道な捜査をしても、処罰を受けることは無いのである。

 検察を管理・監督できる裁組織が事実上、存在しないという事実は、恐るべき事態だ。このままでは、本当に検察は「特高」へと変容し、社会正義は失われていくことになるだろう。

 早急に検察管理・監督機関を設置するとともに、弁護氏の立会いのない取調べによる調書は裁判の証拠にはできないという改革が必要だ。