検察の主張は不自然 -個室ビデオ店放火事件-

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大阪市浪速区の個室ビデオ店に放火し16人を死亡させたとして、殺人や現住建造物等放火などの罪に問われた無職小川和弘被告(47)の論告求刑公判は15日午後、大阪地裁(秋山敬裁判長)で続き、検察側は「通り魔的無差別殺人で、結果は極めて重大」として死刑を求刑した。弁護側は改めて無罪を主張し、結審した。判決は12月2日。

 小川被告は最終意見陳述で「わたしは火を付けていません。付けているなら認めます」と述べ、傍聴席の遺族らに深く頭を下げた。

 検察側は論告で、焼損状況や目撃証言などから、小川被告が自殺目的で放火し、他人を巻き込んでも構わないという殺意があったと主張した。

 その上で「ギャンブルで散財するなどしており、動機に同情の余地はなく、反省の態度も見られない」と指摘。「他人の生命を一顧だにしない冷酷で危険極まりない犯行。遺族の処罰感情は厳しく、極刑で臨むしかない」と述べた。

 弁護側は最終弁論で「自殺する動機はなく、自白調書は捜査機関の脅迫によるもので信用性がない」と反論。火元は被告の個室ではなかった疑いがあると主張した。 

時事通信10月15日

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検察側の「自殺目的で放火し、他人を巻き込んでも構わないという殺意があった」という主張には無理があるように思う。

まず火災当時、本人に仕事の話があったという事実。しかも一緒に店に行った知人との仕事である。自殺するのなら、その仕事がダメになった時が普通だ。この時点で自殺するってのは動機として極めて不自然。つじつまが合わない。例え、その仕事がどうしても嫌だったとしても、バックレれば良いだけの話。放火の動機にしては弱すぎる。

殺人罪で起訴するのもおかしい。自殺目的であるという主張である以上、他人の死を望むような状況ではない。「巻き込まれても構わない」「巻き込まれて死ぬ人、ごめんなさい」というのは警察側の作文くさくて、ちょっと信用できない。言わされた、と考える方が自然だ。

焼け跡は被告がいた18号室ではなく、9号室が最も焼けている(検察側も認めている)。つまり現状は9号室近辺が火元であると示している。これに対して検察側は焼け方から18号室が火元であることを立証できていない。

では何故、被告のいた18号室を火元と断定したのか。9号室に関して検察はドアの外側が酷く焼け、内側があまり焼けていないので、9号室の内側で火が発生したとは考えられないとしている。それでも通常は、9号室のドアの外が火元と考えるのが通常だ。しかしその考えは吹っ飛ばされている。

18号室を火元と断定したのは「(18号室の)バッグから炎が立ち上るのを目撃した」という客の証言を無批判に採用しているためである。(他に論拠が見当たらない)。しかしこの証言をしたのは9号室を使用していた人である。しかも後にこの証人は「別の部屋を使用していたが、9号室の知人に頼まれごとをした」と9号室を使用していたことが嘘であることを明らかにしている。最もひどく焼けている部屋の知人が、何故9号室に居たと嘘をつかなければならないのか?「知人が(この店にいるのが)恥ずかしいからと頼まれた」というが、どうもそこに合理性を感じられない。

しかもこの証人は18号室の部屋の中のキャリーバッグから火が上がっているのを見たと証言している。果たして、それを見たのは何時なのか?自殺のための放火が事実なら、しかも、周囲の人間を巻き込ませようとしているのなら、外から見えるはずはない。ドアを締めているはずだからだ。つまり火を付けているところは見ていないはずであり、これも(事実だとしても)状況証拠に過ぎない。

そして、何故警察はこの男の証言を全面的に採用しているのか。この証言以外、被告が放火したという事実を証明できるものはない。

検察側の主張よりも、弁護側の主張の方が論理的であると感じられる。

被告は当初から放火を否認している。警察の脅しで放火を認めてしまったと証言している。そういうことがこの国で多々起こっていることは事実だ。今回も冤罪の可能性は高いと、私には思える。

検察が「ギャンブルで散財するなどしており、動機に同情の余地はなく、反省の態度も見られない」と主張している。

ギャンブルで散在するなんて誰にでもあること。検察官の過度の潔癖症が疑われる。動機に同情の余地がないといっても、本人は否定している。反省の態度も見られないのは、放火そのものを否定しているんだから当然である。

遺族や被害者の「処罰感情も強い」というが、妙に強すぎる。警察が誘導しているのであろう。

どうもこの検察官。先入観で先走っているように見える。あまり論理的な人ではないようだ。

「死刑にしてほしい」、という遺族・被害者は、一体どうしてこの被告が放火したということを確信できるのだろうか?