いい加減、「黒部の太陽」はお蔵に

21日・22日にフジテレビで「黒部の太陽」を放映するらしい

http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2008/08-258.html

プロジェクト産業の中にいると「また黒部かよ!」と嘆きたくなる。
確かに黒部は、まれに見る難工事の末に大規模水力発電を完成させたという、実にドラマにしやすいプロジェクトだろう。

しかし、いい加減、黒部のような「失敗プロジェクト」を持ち上げるのは止めてほしいと思う。
工事中に171人もの作業員が亡くなっているということを、もっと重く受け止めてほしい。

現在のプロジェクト産業では、作業員が一人死亡したら、プロジェクト管理者の責任が問われる。むしろ、作業員を死なせるような管理をした人間が、巨大プロジェクトを率いる能力はない。リスク分析を十分に行っていないという重大な過失と言える。

「全員が無事に家族の元に帰ることができて、初めてプロジェクトは成功だといえる」
これは海外での巨大工事を手がけている、某社の社長の言葉だ。
それほど、人を大事にしているのが、今の世界のプロジェクトなのだ。


建設工事プロジェクトにおける成功とは、
計画通りの期間、費用、性能・品質を「HSE(健康・安全・環境保全)のもとに」達成することだ。

現在、世界で通用しているこの定義から見れば、黒部ダム青函トンネル台湾新幹線も、いずれも失敗プロジェクトなのだ。青函トンネルも34名が死亡しており、工事期間は実に24年間もの長期にわたる。しかもコストは当初の6890億円が最終的には9000億円となった。明らかに計画そのものが無謀だった。

台湾新幹線も、当初の予定工期が2年も延びて、多額の赤字を発生させており、途中、台湾側から提訴されそうになっている。欧州の規格が問題だったというが、そんなの受注の時からわかっていた。見通しが甘かったのである。

ちなみに、プロジェクトリーダーとなった三菱重工はその後、このプロジェクトの失敗要因をまとめ、業界内で公表した。

むしろ、失敗を認めるこの姿勢こそ、高く評価されなければならない。

先月完成したサハリンLNG建設プロジェクトは日本企業が手がけた、「日本プロジェクト」である。
このプロジェクトではもちろん、死者ゼロ。怪我人さえほとんど出ていない。
しかも、サハリンは元々他の地域の10倍も交通事故の多い場所であるが、
日本企業連合は周辺住民にも呼びかけて、交通安全運動を展開。その結果工事期間中の交通事故を激減させ、現地に交通安全意識を植え付けた。

また、プラント敷地内の小川に、カラフトマスが遡上するという、世界に類を見ないLNGプラントとなった。そこまで環境保全に気を使ったのである。


このような立派なプロジェクトは結構、沢山あるんだよね~
もっとそういうものを紹介して欲しい。