アラブと関係強化する日本

 経済産業省は今年11~12月にアラブ連盟との共同で「日本・アラブ経済フォーラム」を実施する。数日間にわたり、官民一体となって日本とアラブが交流する大規模イベントとなる。

 アラブ連盟とは、1945年にアラブ諸国の独立と主権擁護を目的に設立された組織。加盟国はアラビア半島の諸国と北アフリカイスラエルやイランは入っておらず、パレスチナ解放機構(PLO)も加盟している。

 フォーラムでは貿易や投資、エネルギーや科学技術、人材育成支援などの分野での日本とアラブとの経済関係の強化を図っていく。(本日発表)




 アラブ諸国は昨年までの資源バブルで経済力が向上し、人口も大きく増加してきている。今後10年間で数倍に人口が膨れ上がるとの予想もある。

 しかし、それだけの人口増加を支える電力や水、交通のインフラの整備が遅れているだけではなく、産業もまだまだ育っていない。
 人口が増加すると、それだけ色の仕事を確保する必要もあり、より多くの産業分野が育成されていかなければならない。医療サービス、教育、流通、小売、住宅販売などである。

 これらの産業育成に必要な資金、ノウハウで日本がアラブ諸国に対してできることは多い。アラブ諸国にとって日本は、先進国中でもっとも友好関係を保っている国であり、評価も高い。(アラブという民族の特性から、日本人にとっては腹立たしいことも多いというが、アラブの中で日本への好感度は高いようだ)

 日本にとっても、アラブという市場での橋頭堡を築き、またエネルギー資源の確保の面でも、アラブ諸国との協力関係を強固なものとすることの意義は大きい。



 面白いのは、今回のフォーラムではイスラエルとイランは対象外となり、PLOは対象となっているということだ。たまたま、アラブ連盟がそうなっていたというだけのことではあるが、米国とアラブ連盟はこのような強固な協力関係を築いていない(民間レベルでの交流イベントはあるが、連邦政府は関与していない)だけに、日本としてのアラブに対する独自の姿勢を打ち出すような印象を与えている。ガザへのイスラエルの攻撃が批判を集めていた時期であるだけに、日本の評価が向上する結果につながそうな気がする。、そうなれば望ましい効果だ。

 この経済協力関係が活発化すると、日本からPLOに対する経済面での支援も、より多く具体化していくことになるかもしれない。

 経済産業省は最近、アラブ諸国、中東諸国との関係強化を進めている。UAE(アラブ首長国連邦)への原子力協力にも調印したし、中東産油国とアジアの消費国との閣僚会合を4月に開催することになっている。この先、アジアに次ぐ重要市場となるアラブ地域でのプレゼンスを向上させていくことになれば、日本経済にとってのメリットは非常に大きい。

 そこから先は政治の話になってしまうが、このような経済協力を通じて、日本の努力が中東和平への貢献へとつながっていけばよいな~、切実に思う。