「協調力」その2  価格より信用

 「協調が大事」ということで前回は記事を書いたが、別に競争市場を全否定しているわけではない。
それは現実に存在している。

 小売の世界では、価格競争に意味がある。スーパーマーケットや家電量販店での買い物は「同じものならより安いもの」という意識が購買者に存在するかぎり、価格競争の世界に入っていく。

 しかし、最近は家電量販店でも価格競争が限界点に達してきた。多くの製品はさほど価格差が無くなっている。安値での仕入れルートが確立し、どこも似たようなルートで仕入れるようになったことで、価格差はなくなり、客寄せのため、在庫処分のために一時的に他店より安くなるモノがあるというだけに過ぎない。
 先日、地デジ対応の薄型テレビを購入した際に、機種は決まってたので各量販店に電話し、価格の比較をした。本体価格、運送料、設置費、リサイクル量、ポイントで比較した結果、本体価格にはあまり差はなく、運送料や設置費、ポイント還元での差が多少あった。結局本体価格は若干高かったが、トータルでメリットの高かった店に決めた。

 ちなみにこの時、LABIヤマダ電機の対応は最悪だった。電話では価格に関して一切答えないと言う。これでは信用できないため、真っ先にリストからはずした。
 安いかどうかを決めるつもりだったが、やってみると安さはあまり差がない。結局は相手の対応が重要だった。やはり大きな買い物は信用できるところでなくてはならない。

 正確には価格競争力より信用力である。私が買った店は店員の対応も良く、よりじっくりと選ぶことができた。店員説明も的確だ。選択の幅も広い。ヤマダ電機は確かに安いが、足が向くこともなかった。

 客に信頼感を与えられなければ競争にすらならないという事例の一つだ。


 このようにBtoCでも信頼感が重要だとすれば、BtoBなら余計重要となる。

 例えば、あるメーカーが独自技術による製品の商業化を図るとする。
 ラボレベルでは製造できても、いざ商業化する際にはスケールアップが必要だったり、製造プロセスを合理化する必要がある。そのノウハウはメーカーにない場合、そのプロセスを外注する必要がある。

 ここで問題になるのは、商業化プロセスの構築を外注する際に、メーカーは独自技術に関する情報を、外注先に開示しなければならないということだ。

 では、どういう会社を外注先として選ぶべきだろうか?

 まず、商業化プロセスを確実に実現できるだけの能力を持っていること。これは当然である。これは相手の実績などで評価することができる。実績の中に同じようなメーカーのものでもあれば「あの会社どう?」って確認することもできる。

 次に、その会社の財務状況を確認する。こっちは企業秘密を開示するのだ。途中で倒産されてしまっては、開示企業秘密情報をコントロールできなくなってしまうし、製造できないということで多大な損害を蒙る。
 それから、機密保持に対する姿勢である。これは殆ど常識でもあるが、契約時に機密保持条項を入れておく。そのうえで、どういう体制で顧客の機密の漏洩防止をしているかという話をする。

 価格はその後の話だ。

 「企業が秘密を開示して商業化を他社にまかせるなんてあり得ない」と思ったら大間違い。こういう話は現実の多いのだ。

 実際には顧客の秘密が守れない会社なんて、直ぐに業界内で噂が回って、仕事は取れなくなる。

 さて、ここで問われているのは果たして競争力なのだろうか?

 私は「競争力」が何を示すかはあえて定義していないが、少なくともこれは競争力ではなく信用力であると思う。

 競争がそこにあるとすれば、それは信用の上に成り立っているものである。

 そして信用を構築できる個人の力とは「協調力」なのだ。