「日高義樹の共和党マンセー・レポート」

 東京12CHで毎週日曜日の夕方、日高義樹と名乗るおっさんが「ワシントンレポート」などという番組をやっている。先日何気なく見ていたら、ちょうどエネルギー問題を扱っていた。

 これは私の仕事にも関係するので、普段はこんなつまらない番組は見ないのだが、とりあえずチェックしてみたのだが…。「なんだそりゃあ!?」って思わず言いたくなるよな奇妙奇天烈な内容にたまげてしまった。

とにかく、イントロの1分間の説明だけでも3つ以上の間違いがあるという衝撃の番組でした。一般人ならこんな話でもだまされるかもしらんけど、エネルギー関係者から見たら、ちゃんちゃら可笑しいって内容のてんこ盛り。

これでハドソン研究所の客員首席研究員だっていうんですから、アメリカも相当にヌルいですね。

改めて日高義樹って人がどんな人か、ウィキで見て見ましたら「共和党系の重要人物、殊に知日派ネオコンへの人脈も豊富」ってあった。要するに新米右翼ですね。こんな人だから思想に汚染されて、見るも無残な内容となっているんでしょう。

では、具体的に番組の問題点を指摘して行きましょうか。
石油に関して、この番組では原油価格の高騰の原因を
①中国やインドなど新興国の需要増加と、
産油国の余剰生産能力が低下していること、
③さらに産油国アルカイダのテロを恐れて反米的な姿勢を見せており、リスクが高まっていること
ーを理由にしていました。
(他にもあったような気がする)

①および②は事実としてはその通りです。しかし、それが直接原油価格の高騰に結びついているわけではありません。

③については全くの荒唐無稽な話で、こんなことを信じるエネルギー関係者はいません。
妄想に過ぎないのです。

昨今の原油価格の高騰は、石油の受給バランスでは説明がつかない、というのがエネルギー関係者の共通認識となっています。これまでは、米国における石油需要期(夏のレジャーシーズンにける自動車燃料需要と冬の暖房用燃料需要)直前の米国国内の原油在庫量、あるいは精製能力などが市場価格に反映していましたが、昨今はそれすら無視した動きとなっているのは周知の事実です。

では、何が今、石油価格を押し上げているのか。

「米国の投機ファンドのマネーゲームである」
エネルギー関係者なら、100人中100人がそう答えるはずです。


ニューヨークマーカンタイル取引所(通商ナイメックス「NYMEX」)は世界で最も石油の取り扱い量の多いところです。ここでの取引価格が世界の石油価格を決めている。ところが、数年前からNYMEXの石油取引に投機マネーが一斉に流入してきたのです。

 その投機マネーは、「夏に向けて需要が拡大する→価格を上げるチャンス」とばかりに、原油先物を買いあさります。これによって石油価格が跳ね上がり、その後「利益を最大化できるのはこの辺かな?」ということで利益確定売りに入ります。これによって莫大な利益を投機ファンドが手中に入れているんですね。

原油価格の最大の要因である米国の投機ファンドの石油市場への流入
これをこの番組では全く指摘しません。

番組は、米国エネルギー省(DOE)の前の長官であるエイブラハム氏にインタビューをしています。
このエイブラハム氏、共和党の政治家です。そして、投機ファンドのマネーゲームによる石油価格高騰には全く触れません。

日高義樹氏もこれに触れるような質問をしません。

原油価格の高騰は全て、新興国の需要増加と産油国の供給不足、そして、石油開発に反対する環境保護団体の責任にしてしまいます。

要するにこの番組の主張は次の1点につきます。



ブッシュ政権はなんにも悪くない」



だけど、本当に問題なのは投機マネーのマネーゲームです。それに政府が責任が無い、なんてことはあり得ないはず。

彼ら共和党は、石油価格の高騰がどれだけ世界に迷惑をかけようとも、この「マネーゲーム」を支持し続けるつもりなのです。

なぜなら、この投機ファンドはブッシュ支持者たちだからですね。アメリカはそもそも、投機に寛容な国です。それが良いところもありますが、悪いところも数多くあります。

約10年前のアジアの通貨危機アメリカの投機ファンドが仕掛けたものでした。ハゲタカファンドが暴れまくり、彼らは利益を手にしましたが、アジア各国は軒並み、長い不況に陥ったのです。

それが今度は石油です。ただ、今回の石油高は中東産油国にとっては追い風となりました。石油による収入が何倍にも跳ね上がった結果、中東産油国は今、実に潤っています。しかし、その一方で石油消費国では原油価格の高騰が、徐々に経済を圧迫してきています。

米国が卑怯なのは、原油高が自分の責任であるにもかかわらず、OPECに増産要求をするところです。
しかしOPECは「受給はバランスしている。増産の必要は無い」と答えます。確かに、受給バランスは取れているので増産する必要はありません。また増産したくても増産する余地が殆ど残っていなかったのも事実です。
しかし米国政府は「OPECが増産を拒否した」と非難するのです。

ここでまた出ましたね
「我々は悪くない。悪いのはOPECである」

さらに、石油開発を進めようとしても、環境保護派が反対するのでできない。とエイブラハム氏は非難します。
「ナニイッテンダヨ!?」と突っ込みを忘れずに。

欧米の石油開発は今、滞っています。環境問題の性ではありません。有望な鉱区が無いからです。

最近の石油開発は中東、アフリカ、カスピ海、そして今後は北極海が中心になります。
有望な開発鉱区を持たないアメリカ政府が環境保護派を非難するの理由は一つしかありません。

民主党の牽制」です。

ゴアをはじめ、民主党は環境への意識が高い層が支持母体となっています。
従って、環境問題が活発化すると、共和党は不利になります。
また共和党はエネルギー産業に支えられています。
彼らを保護するために環境保護派を非難しているのです。

正直言って、現在の原油高が問題であると考えているなら、
米国政府には極めて有効な手段があります。
それは石油の戦略備蓄の放出です。

既に戦略備蓄を価格安定のために放出するというアイデアは米国内でも既に提示されています。
しかし政府は「あくまで供給途絶のための備蓄」として、放出を拒否しています。

だが、投機マネーのマネーゲームが価格高騰の原因であるので、
戦略備蓄の放出はファンドを投機抑制に促す効果が十分にあります。

これをやらない理由は当然、投機ファンド、および石油産業の利益を奪うことを、ブッシュ政権としてはやりたくない、ということに尽きるでしょうね。


いやー、それにしても久しぶりに内容の酷いテレビ番組を見ました。

日高義樹のワシントンレポート」。
つまらん番組だな、というのは以前から思っていましたが、その理由が判明しました。

日高義樹共和党マンセー・レポート」だからだったんですね。