「不安定な独楽」 中川翔子というアンビバレンツ

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中川翔子しょこたん)は、決して美人ではないが、可愛い。
しかも、ただ可愛いだけではない「何か」があるように思う。

彼女の新しい本、「ミラクルスケッチ 中川翔子イラスト作品集」の表紙に感じる、ある種の違和感が、その何か、を表現しているのかも知れない。

この表紙は彼女自身が描いたものである。
普通、自分のイラスト作品集に、自画像を持ってくるというのは、あまりない。
通常、自画像とは習作である。自分自身は練習のための題材なのだ。
それを表紙に持ってくるんだから、かなりのナルシスト、というか「自分好き」である。これは否めない。

だが同時に、その自画像が、かなり高い精度で描かれていることにも注目したい。
この絵は、彼女のファンがイメージする「中川翔子」そのものと言っていい。

これを描けるということは、中川翔子さんは、「中川翔子」を正確に相対化して認識しているということだ。
「自分好き」でありながら、どこか「中川翔子」というキャラクターを冷めた目で見ているという感じがある。

そういえば、中川翔子には、こうしたアンビバレンツなイメージが多い。

アニメやマンガが好きで、コスプレを楽しむなど、サブカルチャーへ傾倒しつつ、科学にも関心が高い。
深海魚好きで、「しんかい6000」にも搭乗して喜んでいる姿は、サブカルと科学への関心が両立するというアンビバレンツ。

ブログなどを見ていても、かなり女の子らしい、可愛いものに反応しつつ、あまり可愛くない姿も平気でさらけ出してしまう。
エロっぽい話に乗ることができるのに、自分は「家の中に男がいるのが受け入れられない」。
常に明るい態度でいても、フトした瞬間に瞳の奥にとんでもない孤独(?)をみせる瞬間をカメラが写しこんでいる。

もしかしたら、内弁慶なのかも知れない。
本当は一人で過ごすのが好き、だけど人と一緒にいたい。チヤホヤもされたい。
親友は少なくていいけど、ファンは大勢欲しい。
テレビではしゃいでいても、家では一人で、母親にはわがままを言っている。
そんな姿を想像してしまう。

こうしたいくつかのアンビバレツな軸が、本来の中川翔子を軸として、回っている不安定な独楽、それが「中川翔子」。
そのアンビバレンツな不安定感が彼女の魅力の源泉なんじゃないだろうか。